外にいるかのような環境のシンプルデザイン

なかの外科クリニック

2008年 新築

大阪府豊中市新千里西町3-3-3

TEL.06-6872-0320

http://www.nakanogeka.jp

1970年の万博時に高級住宅街として開発された千里ニュータウン。その中の西町医療センターと呼ばれるエリアに集まる医院のひとつが中埜外科医院でした。院長先生と奥様のお人柄を慕う患者さんが集まる、信頼できる整形外科医院として地域に貢献してこられました。胃腸科外科の勤務医であった、院長先生の息子先生が独立して4代目の新院長となられることを機に、2つの診療科目を標榜する気持ちの良い外科医院づくりを目指すこととなりました。新院長の中埜先生、エネルギッシュで話上手。学生時代に描かれた絵の上手さに驚きました。雰囲気は医師というよりも真面目なグラフィックデザイナーのようですが、人一倍勉強熱心で多くの研鑽を積んでこられた、とても信頼できる先生です。
既存の医院併用住宅の住宅部分を仮診療所に改装した後、医院部分を解体して敷地分割し、そこに新医院を新築するための法的な検討をすることから始めました。面積に余裕がない状況での、大きなX線室を要する胃腸科外科と、大きな理学療法室を要する整形外科の合理的な配置と動線計画や、将来2階を増築することを見据えた構造と平面計画など、難易度の高い課題がありましたが、中埜先生の前向きな発想のおかげで、楽しみながら検討することができました。

建築基準法改悪による審査基準の混乱と、北京オリンピック需要による鉄の価格高騰の影響を被って、とても悩まされ、不安な状況を何度も体験しましたが、前院長先生をはじめとする中埜先生ご一家の寛容なご理解により乗り越えることができました。

ローケーションには恵まれています。北西側には市が所有する傾斜緑地があり、大きな樹木に囲まれています。この環境を活かし、樹木が受ける陽射しを季節ごとに感じ、あたかも屋外にいるかのような癒しの待合室をつくることを考えました。

2つの中庭を建物に侵入させることによって、大きなガラス面越しに植栽が迫ります。中庭は背後の緑地と視覚的につながり、広がりを感じます。大きな壁面にはミラーを貼り中庭の植栽の像を室内に引き込み、その上には大きな窓越しに見える空。外部にいるような雰囲気を強調しました。白いミニマルなしつらえが、それらを際立たせます。

白くて横長のプロポーションの建物。白い内部空間。これらのイメージは中埜先生が最初から明確に考えておられた方向性でした。汚れが目立つゆえに採用に覚悟がいる白い床も、中埜先生自ら毎日掃除されているようです。なかなか見ることはできない、とても嬉しくなる光景です。清潔感や美観の管理を通して、患者さんに愛される診療所を育てていく中埜先生の気概が表われているようです。

相変わらず多くの整形外科の患者さんが訪れ、中埜先生が自らつくられたホームページで情報を得た胃腸科外科の患者さんも順調に増えてきているようです。鼻から入れる胃カメラは、検査最中に笑うことができるくらい楽です。丁寧な説明と自信のある診断。明るくてお奨めできる先生ですので、今後の発展が楽しみです。

ロゴデザイン 中埜廣樹(院長先生)
施工     株式会社 池田邦工務店 加藤秀一
構造設計   アン建築設計事務所 小谷正次郎
設備設計   創見社設備設計 大森将丈
照明計画   株式会社ライト 阪東英輔
撮影     藤谷写真事務所 藤谷伸次
建築面積 214.14㎡   延床面積 214.14㎡