マンションのひと部屋に別世界を築く

西中島の茶室 by ビグディインターナショナル

2004年 改装

大阪市淀川区

http://www.bigoudi.co.jp

和/空間 BEST100 掲載
Memo 男の部屋 2005年2月号 掲載

都心のマンションの一室を茶室に改装しました。

美容室のオーナーであるお施主さんは茶道に造詣が深く、接客や社内教育にも取り入れ成果を上げてきました。社風の象徴となる応接室兼会議室として、また社内の茶道教育をさらに充実させるための施設として計画が持ち上がりました。

現代的に抽象化するのではなく、伝統的な造形による茶室らしい空間にすることを要望されました。まず伝統を知らなければなりませんので、茶道の先生から指南いただくことになりました。当然ながら覚えきれないほど多くのことをお教えくださりましたが、結局は”絶対という決まりはない”と教えてくださりました。

ジャズなどの型があるものを通して、型を研究して共感して尊敬できれば、型からはみだしてもあまり問題がないのでは?と感じていました。内部にどっぷり漬かって、初めて逸脱の可能性が見えてくるのでしょう。

型に漬かる努力から始めましたが、同時に、もともとはマンションであることの外的条件の違いによる障害にも気づくことになります。4隅の巨大なコンクリート梁と電気炉設置に伴う上げ床に挟まれた低い天井高の圧迫感。その解消がまず求められることになります。
伝統茶室の一形式にのっとり「黒竹」「葦(よし)」「杉」で梁下造形を含めて段差を構成し、重なりあう天井による縦方向の奥行きが感じられるようにしました。通常は閉鎖的な茶室空間ですが、僅かな季節感との接点として、風や日射しが感じられるように、開口部を活かしました。視覚的な横への広がりを得て、圧迫感を取り去ることができたと思います。バルコニーに濡れ縁と垣根を設け、プランター植えの落葉樹が季節を感じさせてくれます。常緑樹はビル看板などを隠し美しいシルエットで空を切り取ってくれます。

マンション室内ならではの短いアプローチを、飛び石と自然木と格子とミラーにて、外部のような環境につくりこみました。格子を茶室内へ侵入させて、連続する格子の奥行きにて、時間経過の印象を視覚的に補うことを試みました。
用のある空間として機能させるためのしかけも必要でした。入口の大きさは、にじり口と普通の引き戸サイズを選択できるように工夫しています。普段は照度を落として自然光や樹木の影を楽しめますが、会議時には照明器具を追加できるように配線ダクトを埋め込んでいます。格子の後ろには、むらのある光を忍ばせ、生真面目な格子を時として遊びのあるシルエットとして変化させて、多様な用途に対応できるようにしました。

ひとたび足を踏み入れると別世界に変わることも、重要な用なのかもしれません。その驚きを設計者自身が実感することになりました。お施主さんに感謝しています。隔絶されている開放感や気持ちの良さは、視覚的なものだけではありません。今だに不作法で申し訳ないのですが、茶道に魅せられました。